の我慢?














「…幸村、だめ」



いつもより少し潤んだ黒目がちの瞳で、非難するような眼差しと共に彼女はそう呟いた。



何が「だめ」なのかがわからずに、腰に回した左手はそのままに、ネクタイをほどこうと白い首筋に右手を伸ばすと、ぱしり、とはっきりと跳ね返される。



「なに、?どうしたの?」



弾き返されて行き場を失った右手を、今度はスカートの中へ潜り込ませようと白い太ももを撫でると、びく、と細い肢体が揺れる。

見上げてくるの瞳が、熱をはらんでますます潤んできてるのを確信しながらその先に指を伸ばそうとする。……けれど、予想外に彼女の口から洩れたのは、表情と正反対の拒絶の言葉。



「…っ、幸村、だめ、だめだってば」



腰に回った俺の手から逃れようと、身をよじり、太ももを撫でる手がそれ以上奥にいこうとするのをは懸命に拒絶する。



そこまで嫌がった態度をとられると、さすがの俺だって多少は傷ついて(あくまで多少は、だけど)しぶしぶと未練たっぷりの表情での体を解放し、(並々ならぬ精神力が必要だったが)今まで太ももに触れていた右手と彼女を交互に見つめて不満の意を表してみせる。




「……なんで駄目なの?」
「な、なんでって…だめなものはだめ!第一、ここ学校だし…」
「キスはいいのに?」
「キッ、キスはその…!とにかく、学校じゃこれ以上はだめ!」



少しだけ緩みかけていたネクタイをキュッと締め直し、きっぱりとそう言い切ったに俺はあからさまなため息をついてみせる。




つい先日まで入院してた身とはいえ、今じゃ完璧に健康な中学3年生の男子(おまけに男子テニス部部長とかいう役職まで務めてる)健全な身としては、の言い分ははっきり言って酷すぎだ。









キスはよくて、その先は駄目だなんて、そんなの蛇の生殺しじゃないか。


唇が触れ合うのはよくても、それ以外の部分に触るのは駄目って、一体どういう理屈なんだ。







好きならキスも、触れるのも、その先もしたいって思うのが普通なんじゃないのか?












悶々と考え続ける俺など知った風でなく、切り替えの早い彼女は既に携帯を開いてメールなどを打ち始めている。




非難の意をたっぷりと含めた視線を向けても、目の前の携帯に夢中な彼女が俺の視線に気づくはずもなく、カチカチとボタンを押す音だけが室内に響く。



先ほどまでの行為のせいか、まだほんの少しだけ潤んだ瞳とか、上気した頬とか、白い首筋とかに、我慢してた欲情が再び湧き上がってくるのを感じてそろそろと一度は諦めた体に手を伸ばす。






この手が再び拒絶されない可能性がないわけじゃないけど、俺の自制心ははっきり言ってとっくに限界を通り越している(もともと俺は我慢するのが嫌いだ)
放課後、テニスコートで弦一郎をサーブの的にしなくてすむよう、是非ともには抵抗してほしくない。






「…ねえ、
「んー?」





携帯のメールに集中していた彼女が、俺のその行動に気付いた時は既に俺の腕にとらえられた後で、不意打ちにの手から携帯が落ちる。



カシャン、と硬い音を立てて床に落ちた携帯に気を取られている内に、後頭部を押さえて半ば強引に口づけして、空いた手で一度は諦めかけた太ももを撫でると、びくりと柔らかい体が逃げようとする。









駄目、絶対逃がさない。












「ッ、あ、ゆき、むら…っ!だめだっ、て」
「黙って」
「や、だって、んぅ、っ!!」






キスの合間に必至で抵抗の言葉を漏らす彼女を唇で封じて、先ほどは触れられなかった太ももの間に指を伸ばす。



少し性急かな、とも思ったけどこうでもしなきゃまた逃げられる。




テニスでもそうじゃなくても、狙った獲物は絶対逃したくないんだ。






「あ、や、だめ、幸村…っほんとに、だめ…」



ふるふると首を振って拒否の意を示すその言葉に、ますます征服欲が煽られて下着の脇から中指を一本差し入れる。





意外な事に指先に伝わってきたのはぬるぬるとした感触で、感じやすい体に育ってくれって誠にありがとう、と思う(というか、そういう体に俺がしたんだろうけど)





鼻にかかったような甘い声と、室内に小さく響き始めた水音。



未だ抵抗を諦めてないのか真っ赤な顔で俺を睨み付ける彼女の視線は鋭いけれど、体は正直に反応する。







「…っふ…!!う…!!」






堪えようとしても洩れるの声はひどく色っぽくて、ぞくぞくと戦慄が背中をかけぬける。





下着の中を探る指をもう一本増やそうか、と思いながらも、放課後、俺の八つ当たりを受けずにすんだ真田はに感謝すべきだな、とにやりと笑みがこぼれた






◆ ◆ ◆
幸村は基本的に我慢することが嫌いそう。
自制心がないわけじゃないけど、テニスで自分に厳しい分、
他はゆるいというか、好きなものに関しては執着がすごいというか…(汗)