「「「「「幸村にーちゃーんっ!『 とりっく おあ とりーっと!?』」」」」」
夕暮れのオレンジ色に染まった個室のドアを勢いよく開けて、入ってきたのはカボチャのボウルを抱えた子供達だった。
TRICK or TRICK
突然の訪問者達の奇行に驚いたまま固まってしまったあたしをよそに、彼らは『 とりっく おあ とりーと !!?? 』ともう一度舌っ足らずな発音で叫んでみせる。
浅く腰掛けたベッドの上、先程まで眺めていた練習試合の結果報告書から目を離して、幸村は彼らににこりと柔らかい笑みを浮かべる。
「……TRICK or TREAT………ハロウィンか。お菓子とイタズラ、どっちにしようかな」
「「「「「 とりっく おあ とりーとっ!!」」」」」
「じゃあ TREAT。そこのキャンディ持って行っていいよ」
「「「「「わーいっ!!ありがとおにーちゃん!!」」」」」
穏やかな笑みを浮かべたままテーブルを指した幸村に、彼らは再び声を合わせて礼を言う。
いきなりの訪問者達に未だ固まったままのあたしにも、「ありがとねーちゃん!」と言いながら、彼らは抱えていたプラスチックのカボチャに飴玉を詰め始める。
「………TRICK or TREAT………ハロウィンの「お菓子かイタズラか」っていうやつ?」
「そうそう。正式には『 お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ 』かな。…………まさかこんな所でハロウィン経験するなんて思ってもなかったけど」
「はあ…………」
案外入院してみるもんだな、と人事のように言った幸村に呆れた顔をしてみせて、未だ飴玉を詰め続ける子供らをぼんやりと眺める。
この部屋に来る前にも色々訪問したのだろう、今にも溢れんばかりに詰められたボウルの中身はパイだとかおまんじゅうだとか、バラエティに富んだ菓子ばかり。
子供だからこそ許される、この「突撃隣のお菓子訪問」をある意味うらやましく思いながら、微笑ましい思いでお菓子にたかる彼等を見つめる。
今日がハロウィンであろうがなかろうが、菓子をねだる子供というものは可愛らしいものだ。
「よっしゃ!そんじゃ次のへや行こうぜー!にーちゃんありがとなっ!」
「ありがとー!幸村にーちゃん、またくるねー!」
「またテニスおしえてな!」
「にーちゃんだいすきー!」
飴玉を詰め終わった子供たちがわいわい騒ぎながら部屋を出て行くのを、幸村は最初と変わらない穏やかな笑みで見送る。
嵐のように去っていった訪問者に、ふう、と息をついて目の前の彼を見ると、なにやら面白そうな色を浮かべた瞳。
「」
「…………………………何よ」
「TRICK or TREAT ?」
「………………………その手には乗らないわよ」
間髪いれずにそう答え、先ほど子供たちが詰めきれなかった飴玉の残りをわし掴んで渡すと、「つまらないな」と幸村は苦笑する。
「………つまらない女でけっこう。幸村相手に「お菓子かイタズラか」、なんて、イタズラ選ぶ人間がいたら正気を疑うわ」
「随分と酷い言われようだな。俺、にそんな風に思われてたのか」
「当たり前よ、アンタのイタズラなんて絶対性質悪そうだもの」
「そうでもないよ?意外と気持ちいいと思うけど」
「どんなイタズラする気だったんだアンタ」
平然と恐ろしい事を言ってのけた幸村をギロリと睨み付けると、「それはご想像にお任せするよ」と先程子供たちに向けたのとは全く違う、柔らかな笑みを彼は浮かべる。
端正な顔立ちにとろけるような甘い笑顔。思わず「…………イタズラされてもいいかも」と思ってしまった自分を慌てて叱咤して、手元の資料に視線を戻す。
(……………本当、性質の悪い男………)
自分の笑顔がどれだけ効果的か知っていながら微笑んでみせる幸村に、内心で毒づいて意識を必死で資料に戻す。
このまま流されてしまっては元も子もない、幸村の思う壺だ。
もう一度試合結果を報告しようとプリントの活字に目を走らせるあたしを、幸村は笑みを浮かべたままじっと見つめ続ける。
「…ねえ」
「……………何よ」
「TRICK or TRICK ?」
「だから、その手にはのらないって―」
「犯しか悪戯か、どっちがいい?」
…………………………。
……………………………………………………。
………………………………………………………………はい?
「………………………あの………漢字変換…………間違ってない?」
「間違ってないよ?『 犯しか、悪戯か』?どっち?」
「……………………………」
……………………………………。
………………………………………………………。
………………………………………………………………!!??
「どっちも嫌に決まってんだろうがー!!あ、アアアアアンタなにちょっと犯しって!それもうハロウィンじゃな………ギャーちょっ、来るな来るな!!何してんのよキャー!!」
「、あんまり大きな声出すと人が来るよ?」
「じゃあこの手どかしなさいよ!なにボタン外して…………っあ、ちょ、うそ、マジで…んっ!」
しなやかな手つきで胸元のボタンを外され、耳元に唇を寄せてきた幸村に抵抗する術など当然持ち合わせているはずもなく。
結局幸村の『 犯しと悪戯 』を思う存分受けてしまったあたしは、「………来年は絶対ハロウィンに見舞いなんか行かない…………」と決意する事しか出来ませんでした。
◆ ◆ ◆
いやーこれ楽しかったー(笑)変態な幸村が(最低)
幸村はやっぱ病室でエロがステキだね!(爽やかに)
二時間半で書き上げてしまった…(多分自己最高記録?)
久々UPでエロもどうよ、と思ったんですけどハロウィン用にサイトも改装したかったのでつい…!
この続きが読みたい方とかいてますー!?(多分いないて)orz