「幸村ー?いないのー?」
いつも通り訪れた病室に、予想した彼は見当たらず。
「勝手に花生けとくからねー……って………なんじゃこりゃ」
隠す様子もなく、堂々とベッドの上に置いてあったその雑誌。
< 彼の部屋にはご用心 >
Act 1 .幸村 精一
「………あたしが来るって分かってて、エロ本放置しとくかあ?」
……いや、あたしが来るからこそ嫌がらせに置いてたのかもしれない。
そう思いながら、何気なく手に取り、ぱらぱらとめくる。
視界に入ってくる、エロい体とエロイ顔の、なんとも巨乳のオネーサン。
同じ日本人のはずだが、この(胸の)成長の差はなんなのか。
「………貧乳のあたしに嫌がらせか!!全員巨乳じゃねえか!!」
八つ当たりの様に呟いた予想は、あながち外れているとは思えずに。
幸村の好みは知らないが、このエロ本は貧乳のあたしに対する嫌がらせとしか思えない。
「げ、マジで胸おっきーなー。しかも形もなかなかいいじゃん、いーなあチクショー半分寄こせ」
「それはちょっと無理じゃない?」
「うぎゃああああああ!!??」
突如背後から響いた声に、心の底から悲鳴をあげれば、「病室じゃ騒いじゃ駄目だろ」と、なんとも冷静に近寄ってくる部屋の主。
「ゆ、ゆゆゆゆゆゆ幸村!?」
「何?」
「何じゃないよ!!びっくりしたじゃん!背後から声かけるのやめてよね!」
「ごめんごめん、があまりにも熱中して読んでたから」
「いや別に熱中してたわけじゃ………」
未だ開いたままのエロ本に、ちらりと幸村が視線を落とす。
慌てて勢いよく閉じてシーツの上に放り投げれば、平然とそれを受け取る幸村。
「別に俺見ないからいいのに。持って帰る?」
「そんなもん見る女がどこにいるのよ!!」
「ここにいるけど?」
「…………」
ギロ、と睨みつけて乱暴に持ってきた花を生けようとすれば、くすくす笑いながら見つめられる。
「ごめんごめん、そんなに怒らないで。さっき屋上で仁王と会話した通りの反応するからさ」
「………仁王と?」
「ああ、もう帰ったけど。来るなり『この本、の目のつくとこに置きんしゃい』って持ってきてさ。見つけたらどんな反応するかなって、2人で話してたんだ」
「………あんたらどんだけ性格悪ければ気がすむんですか」
つまり、最初から仁王の罠だった、という事かい。
くすくす笑い続ける幸村を一瞥して、ぱちん、と勢いよく花を切れば、「でも意外だったな」とぽつりと幸村が漏らす。
「意外って……何が?」
「いや、が巨乳に憧れてるってのが」
ガシャン
「うわあああああ花瓶落としたー!!アンタいきなり何言い出す気!!!???」
「え、だって言ってたよね?『 げ、マジで胸おっきーなー。いーなあチクショー半分寄こせ 』って」
「言ったけど!!」
ああ、言いましたけど!!(ヤケ)
そういうのは、時と場合を選んで発言せんか!!!!
真っ赤になりながら割れた破片を片付けようとすれば、「怪我するからいいよ」と制される。
「…………幸村いつから聞いてたの…?」
「え?が『幸村ー?いないのー?』って言った時からかな」
「初めからいたんじゃん!!!!」
きーッと怒りの声をあげれば、くすりと笑ってなだめられる。
「が花束片手に走ってくるのが屋上から見えたから。急いで帰ってきたら、丁度病室に入っていくのが見えて」
そう言って、やんわりと背後から抱きしめられる。
耳元にかかる息が、くすぐったくて、でも気持ちいい。
………って………
「…ちょ…ッ幸村、どこ触って…!!」
「俺はこれくらいの大きさでいいと思うけどね?」
「な…っ!え、ちょ、待…っ!!か、かかかか看護婦さーーーーんっ!!!」
「病室では静かにって言っただろ?」
白いシーツにあたしを押し倒し、にっこりと花の様な笑みを浮かべて言う幸村。
反射的に口元に手を当てて、声を抑えたあたしに、続けて発せられたとんでもない言葉。
「声、ちゃんと我慢してよね?」
ふるふる、と必死で首を横に振って拒否するあたしの視線などお構いなしに。
慣れた手つきで一枚一枚服を脱がされ。
もう二度と、仁王と同じ日に見舞いに来ない事を誓いました。(完)
〜後日談〜
「仁王、てめえ幸村に変な入れ知恵しやがってー!!!(泣)」
仁王 「なんじゃ、いきなり」
「なんじゃ、じゃねえよ!!あの後あたしがどんな目にあったか知ってんのか!!うわああああん、もう二度と幸村の見舞いなんか行かない!!っていうか、行けない!絶対看護婦さん達にばれてたあああ!!」
仁王 「って事は、うまくいったんか。俺のペテンもなかなかじゃのう」
「てめえいっぺん死んで来いやあああ!!!!」
〜へぼへぼ管理人の謝罪〜
彼の部屋にはご用心、シリーズ第1弾です(え、何シリーズにするの)
これって微エロですか?違いますよね!?ね!?(笑)
第2弾のお相手がまだ決まってないので、どなたかリクがあったら嬉しいです(笑)