「ずっとといれたらいいのに」









 にっこり笑ってそう言った彼の言葉を、あたしの一生をかけて実現させてやろうと思ってたのに。










<  永遠の約束  >










「寒……」




 意味なく呟いた言葉にさえ、漏れた吐息は白く濁った。
 無意識に指先を擦り合わせて、はー、と暖めるように息を吐くと、先ほどよりも濃い白い蒸気が暗い空に昇った。



 暗く冷たい、冬の空気。
 頬をピリピリと痛くさせる冷たさに、今更ながら冬がこんなに寒いものだと知った気がした。







 
(……違うな、それだけアイツの側は暖かかったって事かな)









まるで太陽の光のように眩しくて、暖かい存在だった彼。

濃いオレンジ色の髪は、冗談でなくお日様のように明るくて。

側にいると心も体も癒されて、2人ずっと一緒にいれると思ってた。
















なのに
















 


今にも雪が舞い落ちてきそうなグレーの空を見上げて、両手に握っていた紙切れに視線を戻す。








「………『 日増しに冬の寒さが厳しくなってまいりました、今日この頃。皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます』 」







 マンションのポストに届いていた、一通の招待状。
 格式ばった形式で綴られたそれは、紛れもなくあいつの結婚を知らせるもので。











「…『この度、私達は結婚する事になりました。つきましてはささやかな披露宴を催したいと存じます。お忙しいとは思いますが、是非ご出席ください。』 」 













「 『 千石清純  』 …………」









 文末に並んでいる2人の名前。
 







 聞いたことのない女性の名。








「………さん、か……」









 あのふらふら浮気症の千石が結婚するというくらいだから、よっぽど素敵な女性なのだろう。










 そう思い込もうとしても、胸の内が暗く重く、どす暗い何かに支配されてるかのように痛む。










 もう何年も前に終わった恋。





 すっかり忘れてたはずの恋。















 それなのに。
















「くや、しい…………」











 呟きと共に、堰を切ったように涙が溢れ出す。










 あの時、ずっと一緒にいようと約束したのは自分なのに。




 あの時、彼の側にいたのは自分だったのに。










 どうして。







 どうして。















どう、して。












「相手が違うよ、清純………………」











 彼と永遠の約束を交わす、聞いた事もない花嫁の名前を見つめながらそう呟く。








 もしかしたら、ここに記されてたのはあたしの名前だったのかもしれないのに。









 もしかしたら、一生彼の側にいたのは私だったかもしれないのに。












「……………清純……っ!」















 別れてなお愛しい彼の名を呼び続けるあたしに、応える声は勿論ない。




 窓の外、舞いだした粉雪だけが静かにあたしを見つめ続ける。


















 二度と叶う事のない、永遠の約束。










◆ ◆ ◆

暗いなオイ!(笑)←笑うとこじゃないよね
多いんですよね、結婚式。
ご祝儀だけで3万軽くとぶからね_| ̄|〇
招待状の文面はめっちゃ簡略化してあるので参考にしてはいけませんよ(誰もしないよ)
何通も持ってるけどさ、長いしやたら格式ばってるのでかなり省略してます(笑)