「……【 期待の新人グラビア・ヌード100% 生絞り 】…………………………………………………?」









お茶でよかったですか、と言いながら戻ってきた日吉があたしの手にしてるものを見て、3秒半程固まったのが決め手だった。

驚きと焦りが半分ずつ混じったような顔で固まってしまった日吉に、にやりと笑んで見せるとハッと我に返ったように声をあげる。







「っちょっ、それ、なん、先輩!!!!!!」







ほこほこと湯気を立てている湯呑みと茶菓子が載った盆をがちゃんと乱雑に置いて、あたしの手の中の物を奪い取ろうと日吉が切迫してくる。

湯呑みから溢れたお茶が机を汚すのを横目に、伸びて来た日吉の手をするりとかいくぐって握っていた雑誌を開くと諦めたように日吉がそれはそれは深いため息を吐いた。


















彼の部屋にはご用心〜act.6
日吉 若




















「……で?何か言い訳は?」





ぱらぱらと頁をめくる度に表れる、題名通りの格好―つまり一糸纏わぬ全裸の状態―の女の子達を眺めながらそう言うと、隣で正座したままの日吉がうっ、とも、ぐっ、ともつかない声をあげる。

反省してる意を表しているつもりなのか、いつもはピンと伸ばしているはずの背筋がうな垂れる様に曲がっているのが少し面白い。








「…………………【 期待の新人が脱いだ!ちゃん(18)の初☆ヌード 】…………………ふーーーーーーーーーーーーん?





写真の横に書いてある煽り文をわざとらしく読み上げると、俯いたままの日吉の顔が一瞬にして真っ赤に染まる。

何もそこまで赤くならんでも、と思いながら次のページをめくると、これまた巨乳の女の子が上目遣いでこちらを見ている写真。







ギャルというよりも黒髪お嬢様系の清楚な感じの女の子は、成程、確かに日吉が好きそうだ。














「……………………これ、どーやって手に入れたの?」
「え?」
「エロ本」




ページをめくる手を止めないままちろりと視線を上げて問うと、さっと勢いよく日吉が顔を逸らす。

その仕草だけでなんとなく答えが分かった気がして、ぱたん、と本を閉じて立ち上がると、正座したままの日吉がずざっと激しく後ずさる。




「…………………逃げなくてもいいんじゃない?日吉若クン?」
「っ、え、あの、ですね、先輩、ちょっと」
「あの本、どうやって手に入れたか聞いてるんだけどなぁ?」
「うっ」



ずりずりと後ずさっていく日吉にじりじりと一歩ずつ近づくと、焦ったような顔が徐々に怯えを含んだものに変わっていく。

ついに壁に背中が当たった日吉の両肩に手を当てて覗き込むと、蒼ざめた顔が一気に赤く染まりだす。



「答えてくれないの?日吉?」
「………いや、あの、あれ………は…………」
「あたしが聞いてるのに教えてくれないの?」




「その態度、傷つくなぁー」とわざとらしく言ってみせると、目の前の真っ赤な顔がひどく困ったような表情になる。
必死で視線を合わせないようにする日吉の耳に唇を寄せて、「…………………教えて?」と囁くように呟くと、びくりと押さえている両肩が跳ねる。




「っ、せん、ぱ………っ!ちょ…………っ!!」
「言わないなら身体に聞いちゃうけどいいの?」
「!?な、何言って………………」
「今日って隣にお兄さんいたっけ?」



隣室の日吉のお兄さんの存在を気にしつつも、真っ赤に染まった耳朶をかしりと噛むと、吐息のような声を日吉があげる。
このまま本気でやっちゃおうかな、と思いながらシャツの裾に手を入れようとした瞬間、「分かりました言います言いますスイマセンでした!」と勢いよく日吉が叫ぶ。











「っお、忍足さんがこの間部活の後、「いい参考書見つけた見つけたから日吉にやるわ」って袋ごとくれたんです!とりあえずその場はもらったんですけど、帰って開けたら中身がそれだったんです!」










―決して俺が自分で買ったわけじゃありません―と、荒い息をしながら言いきった日吉の顔は真っ赤で、瞳は軽く潤んでいる。

ちょっと苛めすぎたかな、と思いながら押さえつけていた両肩から手を離して解放してやると、途端にほっとしたような表情になる。



「……ったく、最初っからそう言えばいいじゃない。変に隠そうとするから余計怪しくなんのよ」
「…………………すいません」
「どーせ忍足に、「ええか、に見つかっても俺からもらったって言ったらあかんで!?俺のイメージが壊れてまうからな!!」とか言われたんでしょ?」
「…………………う」



あいつの言う事くらいお見通しなのよ、と言わんばかりの顔でそう告げると、降参、というように日吉が長いため息をつく。











全く、人の彼氏になんて事をしてくれるんだアイツは。













「…………明日あの変態エロ眼鏡に会ったら回し蹴り決定ね」
「……………………「日吉ばらしたな!」って、俺が責められたらどうしてくれるんですか」
なんの為にアンタ古武術習ってんの




既に冷め切った冷たいお茶に口をつけながら横目でそう言ったあたしに、日吉は長い長いため息で答えてみせる。

「………なんかすごく疲れました」と呟いた日吉が、もうひとつの湯呑みに手を伸ばしたのを、ぱし、と軽く叩いて阻止すると訝しげな顔になる。




「?…なんですか、先輩」
「水分補給は運動の後がいいと思わない?」
「え?」
「ちょっと今から一汗かこうかなと思って」



にっこり笑ってそう言うと同時、素早いキスを日吉に落とすと戸惑ったような顔が一瞬にして焦りに変わる。

耳たぶ、首筋、とキスを落とし続けるあたしに、今更ながら意味を理解した日吉が「何言ってるんですか!」と抵抗するのをキスで塞いで微笑んでみせる。





なんだかんだ言いつつも、素直に反応してしまう日吉の身体に「…………ホント男って単純」とつくづく思った一日でした。





◆ ◆ ◆

カレ部屋シリーズ第6弾。うわーなんかおかしい!(/_;)
オチてない!というか、オチがない!
日吉ヘタレ度MAX!(笑)
頑張れ日吉!お前が襲われてどーすんだ!シリーズの趣旨が変わっちまうじゃねーか!(←ホントにな)