「アンタ一体何考えてるんですか」

 苛立たしく言ったセリフは、やはり先輩に届いてないようで。



<  実力行使  >







 珍しくホームルームが早く終わって部室に一番乗りをして。

 今日こそは跡部さんから1ゲームとってやる、とか意気込んで部室のドアを開けて。

 そこまではよかった。

 そこまではいつもどおりだった。


 
 …………ドアを開けた瞬間、着替えの真っ最中の先輩に遭遇するまでは。




◆ ◆ ◆


「しょーがないじゃん、マネージャールームないんだから。文句なら跡部に言ってよね」

 かろうじてスカートは履いていたものの、上半身はキャミソール一枚という状態を見られたにも関わらず。
 ひょうひょうと着替えを続ける先輩に、冒頭のセリフを言えば、返って来た上記の言葉。



 ………頭が痛い。




「…とりあえず、俺が来たんですから、一旦着替えやめて下さい」
「は?今ブラ一枚なんだけど、このままでいろと?」
「……………もういいから早く着て下さい」

 頭を抱えてため息をつく俺を、「見なくていーのー?ピチピチ女子中学生の生着替えなんて滅多に見れないよー?」とかふざけた言葉でからかう先輩。



 …………もう本当にやめてくれ。



「………マネージャールームがどうこうじゃなくて。ドアを開けたのが俺じゃなかったらどうなってると思うんですか」
「えー?とりあえず忍足だったら問答無用で殴り飛ばす。むしろ殺る。殺ってやる」
「逆にアンタの方がヤられると思いますが」
「ダイジョーブ、あいつと張り合えるくらいの腕は持っているつもり」

 フフン、と笑いながら「おっし、終わり」と言った声に、くるりと振り向けば、いつものTシャツとジャージに身を包んだ先輩の姿。
 すらりとシャツの裾から伸びた白い手足は、どうみても女性特有の繊細なもので、到底男に敵うとは思えない。

先輩が忍足さんに勝てるとは思いませんが」
「そお?あたしこれでもけっこうやるよ?」
「そうは見えませんけど」

 視線を逸らしたまま答える俺に、「あたしこれでもけっこうやるのよ?」といいながら腕まくりする先輩。
 白く細い二の腕が肩口まで露わになって、わずかに心臓がどきりとなる。

「…………とにかく。こんな真似は今日限りにしてください。二度と部室で着替えないでください」
「なんで」
「だからさっきから言ってるじゃないですか。………アンタヤられてもいいんですか」
「殺られる前に殺る!!」
「…そっちの意味じゃないんですが」

 最高潮に達した苛立ちと共に舌打ちすれば、逆に「じゃあ、どういう意味よ?」と詰め寄られる。

 逆切れかよ。

 この人相手に、まともに説明しようとした俺が馬鹿だった。
 口で言ってもわからないなら仕方ない。




「そうですね。例えばこんな風に」




 言うと同時に、勢いよく先輩の細い両肩を押す。
 ガシャン、と音をたててロッカーに背中をぶつけた先輩に、抵抗する間を与えず唇を塞ぐ。


「っ!!」


 柔らかいその感触を、味わいつくすように舌を入れれば、触れている肩がびくりと強張る。
 抵抗してるつもりなのか、俺の胸を必死で押して離れようとしてる先輩の力は、なんとも非力。


 何が「けっこうやる」だ。

 こんなにも、か弱いくせに。


 抵抗の言葉も意思も全て封じて、本能のまま、何度も何度も口付ける。



 このまま誰も来なければいい。


 
 今すぐ全部喰らい尽くしてしまいたい。






 抑えた腕の細さにすら、欲情する。
 





「…でさー、その時の向日が超面白くてよ…」
「うっせーよ、宍戸!クソクソ!」



 

 遠くから聞こえてきた先輩達の声に、先輩が抵抗の力を強くする。
 もうタイムリミットか。

 名残惜しげにゆっくりと唇を離せば、荒い息を吐きながら、ずるずると滑り落ちるように、ロッカーに寄りかかったまま、床に崩れ落ちる先輩。

「い、い、きなり…っ何、……っ」
「口で言ってもわからないから、体でわからせてあげようと思って」
「は!!??」

 少しだけ涙のにじんだ、真っ赤に染まったその表情。
 睨みあげるその顔にすら、押し倒してしまいたいほどに欲情する。




「…………先輩、隙だらけなんですよ」




 フン、と鼻で笑って部室を出て行こうとする俺の背後で、「……二度と部室じゃ着替えない…」と呆然と先輩が呟く。



 頭で分からないなら体で。



 言葉で通じないのなら、態度で。



 自覚がないならわからせてやる。



 あんたは、押し倒したくなるくらい、魅力的な女だっていう事を。





〜へぼへぼ管理人の謝罪〜

違うでしょ!!他に書くことあるでしょ!?
というお叱りはごもっともです、ハイ!ひいいい!!
いやあの、裏をね。書くに当たって。日吉を第一号にしたかったのです!ので、この続きという形で…その…うううう裏をああああああ!!(脱走)